【環境問題の基礎知識No.02】環境問題への国際的な取り組みの歴史と現状は?

地球環境はさまざまな面において危機的状況にあります。一般企業にも脱炭素への取り組みが求められるようになった昨今、なぜカーボンニュートラルが必要なのかを理解し、目的意識を持って活動することが重要です。

また、ただ何となく環境活動を行うだけでなく、世界各国の脱炭素への取り組みや国際基準を意識し、常に目標を持って現状の見直しとモチベーションの維持を図ることも企業にとって大切なことといえるでしょう。

そこで、今回はいま世界的に深刻な環境問題として知られている3つの事象・現象と、それに対して人類が国際的に取り組んできた歴史・現状についてまとめます。

目次

【おさらい】国際社会が取り組む3つの環境問題

ひと口に環境問題といってもさまざまですが、国際的に協力して解決のために取り組むべき重要な問題は大きく分けて3つあります。ここでは、それら3つの環境問題とはどのようなものか、おさらいしていきましょう。

大気汚染とオゾン層の破壊

1970年代の半ばになり、初めてオゾン層が破壊されつつあることが報告されました。さらに1982年には、南極上空にオゾンホールが出現していることが発見され、世界に衝撃が走ります。

また、時を同じくして、オゾン層破壊の原因物質がフロンであることが解明され始めました。フロンとは特定のクロロフルオロカーボン類のことで、エアコンの冷媒や半導体の洗浄用として多用される化学物質です。フロンは近現代社会の発展を支えてきたことで知られています。

生態系・生物多様性の危機

自然環境の悪化に伴い、絶滅危惧種の増加や野生動物の生息地・餌場の減少など、生物多様性の危機は高まる一方です。

生物多様性の危機は必ずしも環境汚染によるものだけではなく、農林業の衰退によって生物の生息環境が変化していることなども原因として指摘されています。しかし、幅広い人間活動によって二酸化炭素濃度が上がり、海水面の上昇や気候の変化が動物・生物の生命に危機をもたらしたことは明白です。

気候変動

地球上の温室効果ガスの濃度が高まったことが原因と見られる地球温暖化。これによりもたらされているのが、いわゆる異常気象です。極端な高温や頻繁なゲリラ豪雨など、私たちの身近なところですでにその進行を実感する機会が増え、状況の深刻さが伺えます。

日本国内はもちろん、世界各国で洪水や山火事といった自然災害が起きていますが、こうした現象も地球温暖化による気候変動が影響しているものと考えられています。

大気汚染とオゾン層破壊に対する国際的な取り組み

オゾン層が破壊されつつあることが判明して以降、人類は国境を超えてその対策に乗り出しました。以下にまとめたのは、オゾンホールが発見されてから毎年のように採択されたオゾン層保護や大気汚染対策に関する条約や議定書です。

  • 長距離越境大気汚染条約(1979年)
  • 硫黄酸化物排出削減に関するヘルシンキ議定書(1985年)
  • オゾン層保護のためのウィーン条約(1985年)
  • オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(1987年)
  • 窒素酸化物排出規制とその越境移動に関するソフィア議定書(1988年)
  • 揮発性有機化合物の排出規制とその越境移動に関するジュネーブ議定(1991年)                          (カッコ内は採択年)

上記の取り決めが採択されてからも、続々とさまざまな条約・議定書が採択されてきました。特に、次に項を設けて解説している「オゾン層保護のためのウィーン条約(通称ウィーン条約)」は、回を重ねて締約国会議が開催されている重要な取り決めです。ぜひ覚えておいて、報道などで登場した際、内容をチェックしてみてください。

オゾン層保護のためのウィーン条約(通称ウィーン条約)

空調用の冷媒・断熱材発泡剤など、オゾン層に悪影響を及ぼす物質の規制に関する国際的な枠組みを定めた条約です。1985年3月に採択されて以来、12回に渡る締約国会議を重ねています。

先ほど示した表内で「オゾン層保護のためのウィーン条約」の真下に示した「モントリオール議定書」には、オゾン層の保護に必要とされる具体的な規制対象物質とその削減スケジュールが盛り込まれました。

締約国会議で定められる規制やスケジュールは回を追うごとに厳しさを増していますが、これによって空調用冷媒・断熱材発泡剤等に使われてきた特定フロンの生産・消費が全廃されるなど、着実に成果を表しています。

生態系の危機に対する国際的な取り組み

生態系に関して国際的な取り決めが行われた初めてのケースは「ラムサール条約」です。ラムサール条約は、水鳥が食物連鎖の頂点となる湿地本来の生態系を守るために発効されました。

これを皮切りに、生物多様性の危機を乗り越えるため、さまざまな国際会議が開かれ、協力的に取り組むためのルール作りが進んでいったのです。以下に主な条約等について解説します。

ラムサール条約

イランのラムサールにて1971年に採択された湿地とその生態系保護に関する国際的取り決めで、正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいます。湿地の「保全・再生」「ワイズユース」「交流・学習」の3つを柱とする条約です。

締約国はそれぞれ、国際基準に則して自国の湿地を登録簿に掲載し、ここに登録された湿地は「ラムサール条約湿地」と呼ばれています。ラムサール条約で定義された「湿地」について、以下に引用します。

天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(海水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む                       ラムサール条約第1条1           https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/About_RamsarSite.html

ワシントン条約

1973年に採択された条約で、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」といいます。環境破壊、乱獲、採集、外来種の侵入などによって起き得る野生動物の絶滅を予防するために制定されました。

ワシントン条約は国家間の行き過ぎた取引を規制することにより、野生動植物の種の絶滅をなくしていこうという取り決めです。締約国会議はすでに過去19回も重ねられており、アホウドリの個体数の回復など一定の成果を挙げています。

生物多様性条約

1993年に発効された国際条約です。種の絶滅を減らして保全し、地球規模で生物多様性について考えるためのもので、現在も締約国会議が定期的に行われています。

この生物多様性条約は、①生物多様性の保全、②その構成要素の持続的な利用、③遺伝資源の利用から生ずる利益が遺伝資源の保有国・利用国間で公正かつ公平に配分されること、という3つの目的を掲げています。

このことから、自国のバイオテクノロジー産業に影響があることを懸念したアメリカはこの条約に先進国で唯一加盟していません。日本は生物多様性条約を受け、遺伝子・生物種・生態系の3つの視点で生物多様性を保全するための「生物多様性国家戦略」を1995年に制定しています。

気候変動に対する国際的な取り組み

気候変動に関する国際的な取り組みとして筆頭に挙げられるのは、世界中の科学者と手を結んで深刻な気候変動問題に取り組もうという組織「IPCC」です。ここではIPCCについてわかりやすく解説します。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは?

気候変動に関する政府間パネルとは国際的な政府間組織で、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が1988年に設立しました。正式名称を「Intergovernmental Panel on Climate Change」といい、略して「IPCC」と呼ばれています。

IPCCは世界各国の科学者の力を借り、科学誌に掲載された論文などに基づいた報告書を定期的に作成します。この報告書のお陰で、気候変動に関する政策決定に必要な科学的根拠を提供してもらうことができるのです。

IPCCは3つの作業部会と、温室効果ガスの排出・吸収量の算定方法を取りまとめる部隊から構成されている専門的な組織。各国の政策決定者は、ここで作成された報告書を活用するのです。

最新の第6次評価報告書では、人間活動が大気・海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない、と地球温暖化の原因が人間による活動であることが断定的に述べられています。

まとめ:環境問題に対する取り組みの流れをチェックすることが重要

地球環境が悪化していることに気が付き、いち早く対策や取り組みを始めた先人たちがいることをご理解いただけたと思います。御社の脱炭素への取り組みは、昨今の国際的な取り組みと足並みを揃えることができているでしょうか?

今回ご紹介した条約に関する国際会議は概ね定期的に行われているので、報道をこまめにチェックしてみてください。そしてその動向に関心を寄せ、会社の規模に関係なくグローバルな目線で環境問題に取り組み、国際基準を意識した環境活動に取り組んでいる企業であることを内外にアピールすることにより、営業効果の拡大やブランディングに活用していくことも重要です。

また、環境問題への意識が高い中小企業様の中には、STB認証取得に向けて動いている会社が増加傾向にあります。STB認証は温室効果ガス排出の削減目標を立てていることが認められた証で、ステークホルダーへの理解や認知を促したりアピールしたりするのに大変有効です。次回、このSTB認証についてその取得方法やメリットなどをわかりやすくお伝えします。ぜひお楽しみにしてください。

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この記事を書いた人

Dステ編集部は、編集長であるDuoPartnerDesignの松口を中心に、環境教育を履修・資格取得したメンバーで構成されています。環境問題とビジネスの関係や、SDGsに対する幅広い情報・知識を、できるだけ専門用語を使わずわかりやすい言葉で皆様に共有します。また、こうした情報・知識をいかにして企業の広報やブランディングと繋げていくのかを常に考え、役立つコンテンツとして発信していく考えです。

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