【エネルギー白書2026が示す「いま」】中小製造業の脱炭素は何から棚卸しする?

2026年10月23日、経済産業省は「令和7年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2026)が閣議決定されたと発表しました。
今年の白書は、2026年2月末以降の中東情勢がエネルギー価格や海上輸送に与えた影響と、日本の対応に焦点を当てています。
私たちの見方では、エネルギーはいま製造業にとって、環境より先に「コスト」と「供給」の問題として迫っています。

結論:
脱炭素は、大きな投資の前に「取り組みの棚卸し」から始めると、営業・採用・ブランドに使える形になります。

この記事では、棚卸しの4つの手順、相談先の見分け方、社内でそのまま使えるチェックリストをまとめます。

クモッタちゃん

「何から始めればいいか分からない」ですって? あークモッタクモッタ。それなら、まずは棚卸しからです。

この記事が役に立つ方:
製造業(または製造業と取引のある会社)の経営者・経営層と、社長から任された総務・環境・品質・営業の担当者。

目次

いま何が起きている? エネルギーは「コストと供給」の問題になった

白書2026は、中東情勢を「エネルギー安全保障に大きな影響を与えた事態」と位置づけ、日本の対応をまとめています。

経済産業省の発表によると、今年の白書は3つの部分に焦点を当てています。
福島復興の進捗、中東情勢の推移と各国の動向、そして中東情勢を踏まえた日本の対応です。
2026年2月末の米国・イスラエルとイランとの攻撃の応酬後、ホルムズ海峡で通航が難しい状況が生じました。日本は、石油備蓄の放出や原油の代替調達の拡大、価格高騰への対応を行ったと説明されています。

私たちの見方では、この状況は中小製造業にとって2つの意味を持ちます。
1つは、エネルギーの使用量を減らすことが、そのまま経営の守りになること。
もう1つは、その取り組みの記録が、取引先や採用に向けた発信の材料になることです。

中小企業の実態は? 取り組みは過半数、でも「自社だけ」が7割

日本商工会議所・東京商工会議所の2026年度調査では、脱炭素に取り組む企業は過半数ですが、取引先から要請を受けた企業の72.4%は自社のみで対応しています。

この調査は、2026年5月7日から5月29日に、全国の商工会議所の会員企業2,497社が回答したものです(2026年7月16日公表)。主な結果を表にまとめます。

クモッタちゃん

数字は、調査の対象と時期をそろえて見るのが大事。下の表をご覧ください。

項目結果
脱炭素に関する取り組みを実施している過半数(従業員51人以上は7割以上、5人以下は34.2%)
取り組みの内容省エネ型設備への更新・新規導入など省エネの割合が高い。使用量・排出量の把握、資源循環はそれぞれ約4割
取引先等から要請を受けている14.2%(業種別では製造業などが上位)
要請を受けた企業のうち、取引条件になっている42.8%(「取引条件になっている」と「対応が事実上求められている」の合計)
要請を受けた企業のうち、支援を受けている27.6%(72.4%は自社のみで対応)
政府・自治体に期待する支援省エネ設備、再エネ導入等に対する資金面での支援 57.3%
商工会議所に期待する支援省エネ・脱炭素に関する支援策や補助金等のわかりやすい情報提供 59.4%

出典:日本商工会議所・東京商工会議所「2026年度中小企業の脱炭素に関する実態調査」(2026年7月16日公表)

私たちの見方では、要請を受けてから慌てるより、要請が来る前に棚卸しをしておくほうが、対応の選択肢が広がります。

脱炭素の棚卸し、4つの手順は?

  • 使用量をそろえる
  • 国の省エネ診断を受ける
  • 取引先の要請と「聞かれること」を書き出す
  • 「なぜ自社が環境に取り組むのか」を1枚にまとめる

の4つです。

手順
電気・ガス・燃料の使用量を1年分そろえる

請求書や検針票から、月ごとの使用量と金額を表にします。工場と事務所、できれば設備ごとに分けておくと、次の診断で話が早くなります。
CO2の数字は、この段階では出しません。算定は専門の会社や公的な窓口にご相談ください。

手順
国の省エネ診断を受ける

国の省エネ診断は、資源エネルギー庁の事業です(令和7年度補正 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費)。採択された診断機関の専門家が、工場や事業所のエネルギーの使用状況を診断し、改善項目を提案します。料金(税込)は、ウォークスルー診断の設備単位プランが1設備6,006円、工場・事業所全体プランが16,016円〜51,051円です。
対象は原則として申込時点で中小企業基本法の中小企業者で、製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下です。2026年10月31日時点で申込を受け付けています。
申込の前に、特設Webサイトで最新の案内をご確認ください。

手順
取引先の要請と「聞かれること」を書き出す

すでに届いている調査票や依頼メールを1か所に集めます。
まだ要請がなくても、主要な取引先が公表している環境方針を読み、聞かれそうな項目を書き出しておきます。

手順
「なぜ自社が環境に取り組むのか」を1枚にまとめる

手順①〜③で見えた事実をもとに、自社の理由を短い文章にします。コスト、取引先、地域、採用のどれが出発点でも構いません。
この1枚が、Webサイトや会社案内、採用ページの土台になります。

相談先はどう見分ける? 環境省認定「脱炭素アドバイザー」の3類型

環境省は、民間の資格制度を「ベーシック」「アドバンスト」「シニアアドバイザー」の3つの類型で認定しています。相談相手を選ぶときの目安の1つになります。

環境省は2026年10月1日、脱炭素アドバイザー資格制度で新たに認定した資格を公表しました。発表では、中小企業について「排出量の算定やデータ提供が求められる場面が増えています」と述べています。

3つの類型は次のとおりです。
  • ベーシック:
    温室効果ガス排出量の把握や基本的な削減対策など、企業の初期的な取り組みを支援する基礎的知識を備えた人材
  • アドバンスト:
    排出量算定、削減策の立案、実務への適用など、より専門性の高い支援を行う人材
  • シニアアドバイザー:
    経営戦略や投資判断、情報開示など上流工程も含め、高度な助言を行う人材

認定された資格の一覧は、環境省の特設ページで確認できます。認定の有効期間は、認定日から2年間です。

イナイくん

せっかく相談相手を探すのに、資格の種類まで見ないなんて、もったいない!

社内でそのまま使える「棚卸しチェックリスト」

次の10項目を、担当者と経営者で一緒に埋めてください。

  • 電気・ガス・燃料の請求書を12か月分集めた
  • 月ごとの使用量と金額を1枚の表にした
  • 工場と事務所で使用量を分けた
  • 国の省エネ診断の対象かどうかを確かめた
  • 診断の申込先(診断機関)を特設Webサイトで選んだ
  • 取引先から届いた調査票・依頼を1か所に集めた
  • 主要な取引先の環境方針を読んだ
  • 社内で環境の取り組みを担当する人を決めた
  • これまでの取り組み(LED化、設備更新など)を日付つきで書き出した
  • 「なぜ自社が環境に取り組むのか」を200字で書いた

製造業の目線

工場では、空調や照明だけでなく、コンプレッサや生産設備、工業炉がエネルギーの大きな使い手です。
協力会社との取引でも、環境の話は見積もりと一緒に出てきます。棚卸しは、現場と営業が同じ表を見るところから始まります。

ちょっと深掘り:エネルギー白書は「法律で決まった報告書」

エネルギー白書は、エネルギー政策基本法第11条に基づき、政府がエネルギーの需給に関して講じた施策の概況を国会に提出する報告書です。前年度に講じた施策の状況が、毎年記載されます。
つまり白書は、国が「何をしたか」を自ら整理した一次資料です。取引先や金融機関と話すときの、共通の土台として使えます。

よくある質問

小さな会社でも省エネ診断を受けられますか?

対象は原則として申込時点で中小企業基本法の中小企業者です。製造業は、資本金3億円以下または従業員300人以下が条件です。詳しくは特設Webサイトの支援対象者の欄をご確認ください。

CO2の排出量は、自社で計算しないとだめですか?

棚卸しの段階では、使用量の把握までで十分です。算定や目標設定は専門の判断が要るため、専門家や公的な窓口にご相談ください。

まとめ

  • エネルギー白書2026(2026年10月23日閣議決定)は、中東情勢とエネルギー安全保障に焦点を当てています。
  • 日商・東商の2026年度調査では、取引先から要請を受けた企業の72.4%が自社のみで対応しています。
  • 脱炭素は、使用量をそろえる→省エネ診断→要請の整理→理由を1枚に、の順で棚卸しすると動き出せます。
メグム君

一歩目は、請求書を集めるところから。踏み出せば、見える景色が変わりますよ。

こんなお悩みはありませんか?
  • 脱炭素に取り組み始めたが、それを会社の成長(営業・採用・ブランド)にどうつなげるか整理できていない。
  • 何から手をつけるべきかわからない。

ひとこと声をかけてください。
いまの状況をうかがって、何から始めるかを一緒に整理します。


【参考資料】

  • 「令和7年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2026)が閣議決定されました/経済産業省/2026年10月23日/https://www.meti.go.jp/press/2026/10/20261023001.html/確認日 2026年10月31日
  • 脱炭素アドバイザー資格制度の認定資格の公表について(令和8年10月1日付認定)/環境省/2026年10月1日/https://www.env.go.jp/press/press_05621.html/確認日 2026年10月31日
  • 「2026年度中小企業の脱炭素に関する実態調査」の集計結果について/日本商工会議所・東京商工会議所/2026年7月16日/https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1209899/確認日 2026年10月31日
  • 省エネ診断・伴走支援(令和7年度補正 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費)/資源エネルギー庁・一般社団法人環境共創イニシアチブ(事務局)/https://shoeneshindan.jp/guide//確認日 2026年10月31日
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Dステ編集部は、編集長であるDuoPartnerDesignの松口を中心に、環境教育を履修・資格取得したメンバーで構成されています。環境問題とビジネスの関係や、SDGsに対する幅広い情報・知識を、できるだけ専門用語を使わずわかりやすい言葉で皆様に共有します。また、こうした情報・知識をいかにして企業の広報やブランディングと繋げていくのかを常に考え、役立つコンテンツとして発信していく考えです。

目次