【メリット・デメリット解説】中小企業の脱炭素経営はなぜ必要?

2050年カーボンニュートラルに向け、また2030年の中間目標に向けて、国内のグローバル企業や上場企業はすでに脱炭素経営を進めています。上場企業が率先して脱炭素経営に取り組むのは、もちろん地球の未来のためではありますが、それが義務付けられているからでもあります。

また、世界的に見ても脱炭素への取り組みは、企業や組織だけでなく、国民1人1人が意識を高めるべき課題になっており、社会的役割を担う企業が避けて通ることはできません。

中でも中小企業は、上場企業との取引や契約をめぐって、脱炭素経営を余儀なくされているのが実情です。

今回は、中小企業が脱炭素経営をすべき理由と、脱炭素経営を進めるメリット・デメリットのほか、
脱炭素経営とはどのような取り組みを指すのか、具体的な事例についてもご紹介します。

目次

中小企業の脱炭素経営が必要な理由は自社も地球も「賢く生き残るため」

中小企業は、脱炭素経営を進めることで地球環境負荷低減に貢献することができます。しかしそれだけではなく、自社が将来賢く生き残るためにも、脱炭素経営はもはや避けられない企業努力です。

脱炭素経営に勤しむ企業にしか得られないメリットはあまりに多い一方、取り組まないことで得られるメリットはほとんど見当たりません。

そして、脱炭素経営に励む企業は、ブランディングに強いという点でも取り組んでいない企業との差が歴然となるでしょう。脱炭素経営を進める中小企業のメリット・デメリットについては、次章で詳しく紹介します。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁WEBサイト
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/html/1-2-1.html

【メリット・デメリット】中小企業が脱炭素経営に取り組むとどうなる?

中小企業が脱炭素経営を取り入れると、デメリットよりも圧倒的にメリットの方が多いといえます。ここでは、中小企業が脱炭素経営に注力することで得られるメリットをご紹介し、しいて挙げられるデメリットについても解説します。

【自社の未来のために】脱炭素経営のメリット

中小企業が脱炭素経営を推し進めていくと、その先にはさまざまなメリットが待っています。地球環境不可低減に貢献できるのはもちろんですが、ビジネスにおいてもメリットは豊富です。

ここではまず、脱炭素経営が中小企業にもたらすメリットをご紹介します。

メリット①ビジネスにおいて優位性を高めることができる

プライム市場上場企業は、気候変動が自社にもたらすリスクや、そのリスクを低減するための管理・目標、目標達成までの進捗状況などを開示することが求められています。プライム市場上場企業は、これらのことが事実上義務化されているのです。

こうした流れから、大企業は脱炭素経営を進めざるを得ず、自社と取引関係にある中小企業に対しても脱炭素経営を求める構図ができつつあります。

つまり、脱炭素経営をいち早く進めている中小企業が取引先として選ばれやすくなるのは自明の理。市場競争で優位性を見せて勝ち残るためには、中小企業の脱炭素経営はたいへん効果的なのです。

補足資料:脱炭素経営に向けたはじめの一歩
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news350130.pdf

メリット②光熱費を抑えることができる

脱炭素経営に注力していくと、事業所で使う空調の性能を上げる必要が生じます。というのも、設備機器の稼働効率が悪いということは、その分余計なエネルギーを使用していることにほかならないためです。

特に製造業の場合、工場で使われる電力量は膨大。空調コスト以外にも、生産ラインで使用する機器などには大きな電力を要しますが、脱炭素とコスト削減を同時に推進するには、空調設備の見直しなどが一番取り組みやすいといえます。

あらかじめ省エネタイプの設備を導入することや、空調の定期メンテナンスを怠らないことによって、機器の効率を維持・向上させることは十分にできます。環境課題に取り組みながら光熱費を削減できることは、脱炭素経営の大きなメリットです。

メリット③採用面で有利

現代の若者には、企業が環境問題に取り組んでいるかどうかを気にする傾向が顕著です。2020年に実施されたある調査会社のアンケート調査によると、中学生から大学生までの若者が最も関心を寄せている環境問題・社会問題が「気候変動」だったとされます。

SDGsの認知度や関心度が日に日に上昇するなか、脱炭素経営に取り組んでいない中小企業に将来性を感じにくい就活生・転職希望者などは、今後ますます増加していくのではないでしょうか。

その点、目標を設定して脱炭素に取り組み一定の成果を上げていけば、環境意識の高い優秀な若い人材に就職先として選ばれる可能性がグンと高まります。

参考資料:日本総研 若者の意識調査(報告) ― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識 ―
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/200813report.pdf

メリット④社内の環境意識の改善・向上に繋がる

脱炭素経営を進めれば、自社の社員が環境問題に対して当事者意識を持つようになります。その流れで、脱炭素や省エネを念頭においた製品・サービスの企画や、日頃の省エネ活動など、業務や行動にも変化をもたらすことができるようになるのです。

そもそも事業者は、雇用している人に対して環境教育をしていくことが求められており、これは「環境教育等促進法」の中でも定められています。

また、こうした取り組みをする際には、社内だけで環境活動に取り組むのではなく、外部と連携することも重要です。
環境教育については下記の記事でさらにわかりやすく紹介していますので、ぜひご覧ください。

メリット⑤会社のプロモーションやブランディングに好影響を与えられる

脱炭素経営に取り組んでいる企業に対し、マイナスイメージを持つ人はあまりいないのではないでしょうか。むしろ、積極的な取り組みを外部に向かってアピールすることは、本事業への好影響に繋がることでしょう。

アピールの仕方は慎重に選ぶ必要がありますが、やり方次第では、脱炭素経営や環境活動を広く世間に知らしめることは、事業のプロモーションや自社のブランディングを力強く推進するための重要な要素となり得るのです。

【初期費用は不可避】脱炭素経営のデメリット

脱炭素経営を実践するには、設備の導入・更新をはじめとした費用がかかります。しかし、脱炭素経営には、費用をかけた以上にメリットが多いため、はたして初期費用を「デメリット」であると言い切れるかどうかは疑問です。

現代では、脱炭素経営に取り組まないことによって会社にもたらされるデメリットの方が、圧倒的に多いと言えるのではないでしょうか。

今や当たり前になりつつあるんだね!

中小企業が取り組んでいる脱炭素経営の具体的事例

電気自動車の導入

従来使用してきた社用車を、ガソリン車から電気自動車に切り替えることは脱炭素の取り組みのひとつとして代表的です。ただし、低減すべきCO2排出量とは、自動車の使用時に排出されるCO2量だけでなく、製造時や廃棄時など、その車のライフサイクル全体の排出量も含まれます。

そのため、導入する自動車の車種を選ぶ際には、現在と比較してどれくらいの脱炭素ができるのか、事前に調べてから導入されることをおすすめします。

低CO2の設備機器導入および定期メンテナンス

企業や事業所では、さまざまな用途で電力が使用されています。業種・業態によって、何に多くの電力を使っているかは異なりますが、例えばオフィスビルの場合、夏季の17時頃における電力消費の内訳では、空調の電力使用量が48.6%と圧倒的な割合を占めます。

脱炭素経営を進めるには、これほどの電力を使用する空調機器を低炭素製品に更新したり、設備の機能を高めるための定期メンテナンスを依頼したりするだけでも、CO2排出量をかなり低減することができるでしょう。

フードロス対策

フードロスと脱炭素は一見すると直接的に関係があるように思われない方もいるかもしれませんが、大量に余った食品を廃棄する際には、多くのCO2が排出されてしまいます。また、時をさかのぼって、製造・加工・流通などの各段階、卸業者から消費者の手に渡り、その後廃棄される段階でも、同様にCO2が排出されます。

また、CO2排出以外にも、食品の製造から消費・廃棄に至るまでにはさまざまな資源が投入されるため、余剰分となる食品が増えれば触れるほど環境への影響は膨らむのです。製造業だけでなく、あらゆる企業においてフードロス問題に取り組むことは、脱炭素経営に繋がります。

低炭素製品の積極利用

オフィスや工場などで使用する文房具一つ取っても、最近は脱炭素を目的とした低炭素製品があれこれ流通していることをご存知でしょうか。まずは身近で使用しているアイテムを低炭素製品に変えることも、会社全体で見れば大きな成果に繋がります。

低炭素製品は徐々にバリエーションも広がり、大手メーカー製から個人のクリエーターによるプロダクトまで、さまざまな商品を手に入れることが可能です。こうした情報について常にアンテナを張っていることも、賢い脱炭素経営には必要といえるでしょう。

脱炭素コンサルによる支援サービス導入

脱炭素経営とひと口に言っても、ここまでご紹介してきたようなさまざまな取り組みがあるうえ、本格的に脱炭素経営化しようとすれば、必要な手順を踏んで着実に目的を達成していくことが求められます。

しかし現実には、いざ脱炭素経営に踏み切ろうとしても、何から手をつけたら良いか、どのように目標設定したらいいのかなど、わからないことだらけになってしまうケースも珍しくありません。

そのため、効率的かつ効果的に脱炭素経営を促進するには、脱炭素に対する知見が豊富なコンサルタントなどを通じ、自社に最適な脱炭素計画を立て、そのプランに則して着実に脱炭素を進めることもおすすめです。

脱炭素経営を本格化させる手順

脱炭素経営を進めるには、まずは会社をあげてできることにコツコツと取り組みましょう。しかし、最終的には、採算が合うよう考慮した上で再生エネルギーを使用し、脱炭素を前提として事業を成り立たせる必要があります。ステークホルダーからのニーズを汲み取りながら、ステップごとに行うべき行動を取ることが重要なのです。

環境省では、脱炭素経営の各フェーズにおいて企業に求められる行動をわかりやすく提示しています。
このステップは、まず自社の現状を知るところから始まります。

専門家の意見を聞きながら、現状把握と目標設定、脱炭素経営のプランニングを行いましょう。

まとめ:中小企業の脱炭素経営はもはや必須

脱炭素経営の必要性について悩む時代は実は終わっていて、中小企業が今後も会社を守り育てていくには、脱炭素経営を実践していくことが必要不可欠となってきました。脱炭素への取り組みは、日常の中で使用するアイテムを選んだり、フードロス対策をしたりするなど、個人レベルでも多くのことができます。

一方、本格的に企業が脱炭素経営に取り組む場合には、現状を数値で把握し、具体的な目標を設定し、その目標に則した手段を選んで実行しなければなりません。口で言うのは簡単ですが、脱炭素に関する知見に乏しいとなかなか進められないのが現実です。

補助金活用を視野に入れつつ、一日も早く脱炭素経営を本格化させたいという方は、
ぜひ専門家のサポートを受け、現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

Dステ編集部は、編集長であるDuoPartnerDesignの松口を中心に、環境教育を履修・資格取得したメンバーで構成されています。環境問題とビジネスの関係や、SDGsに対する幅広い情報・知識を、できるだけ専門用語を使わずわかりやすい言葉で皆様に共有します。また、こうした情報・知識をいかにして企業の広報やブランディングと繋げていくのかを常に考え、役立つコンテンツとして発信していく考えです。

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